パイプライン
ICEF15
ターゲット疾患
ICEF15のターゲット疾患は切迫性便失禁です。
便失禁とは普通便のコントロールがうまくいかず便が肛門から漏れ出る状態をあらわしており、日本国内には約500万人の便失禁の患者さまが存在すると言われています(出所:一般社団法人日本大腸肛門病学会ウェブサイト)。
便失禁は医学的には切迫性便失禁と漏出性便失禁で区別されます。このうち切迫性便失禁は、便意を感じるもののトイレに行くまでの短い時間を我慢できずに便が漏れてしまう状態を主な症状とし、外肛門括約筋の損傷が原因となって発生することが多くあります。専門学会誌に発表された論文(味村俊樹ほか「本邦における便失禁診療の実態調査報告―診断と治療の現状―」日本大腸肛門病会誌 65:101-108,2012)によると、便失禁患者さまのうち半数強(約51%)が切迫性の症状を有しています。
現在切迫性便失禁については、食生活の改善や下痢止め剤など(初期保存的療法)やバイオフィードバック療法など(専門的保存的療法)を行い、それら保存的療法の効果が不十分な場合に肛門括約筋形成術などのメスを伴う外科治療が適用されています。しかしながら、これらの既存の外科治療は侵襲性が高いことから患者さまに好まれないことが多く、また、効果が不十分な場合もあるため、保存的療法で充分な効果を得られない患者さまに対する低侵襲で効果が高いな治療法が待ち望まれている状況です。
ICEF15を用いた治療法は、既存の外科治療よりも侵襲性が低く、患者さまご自身から採取した骨格筋細胞を培養して患者さまご自身の外肛門括約筋に注入するというものです。これにより、損傷した外肛門括約筋の機能を回復し、根治を目指します。
開発中製品の特徴
作用機序
ICEF15は、日本の法律では再生医療等製品に、欧州ではATMP(Advanced Therapy Medicinal Product)に、米国ではHCT/P (Human Cells, Tissues, and Cellular and Tissue-based Products)に分類されています。
ICEF15で使用する細胞は、患者さまご自身から採取して製造した自家骨格筋由来細胞 (aSMDC)です。骨格筋由来細胞は筋繊維を形成する「筋芽細胞」に相当する細胞であり、損傷を受けた筋管細胞(注:骨格筋細胞が融合して形成する筋線維の最小単位)と融合して骨格筋の再生を促します。この細胞は、一旦筋管細胞に取り込まれると、成熟筋管細胞の一部として長期にわたり外肛門括約筋の機能維持に寄与すると考えられています。
投与方法
ICEF15による治療は、患者さまが静脈麻酔を受けている間に超音波ガイド下で外肛門括約筋に対して自家骨格筋由来細胞を12回に分けて注入します。12回の注入が1回の処置で実施されます。ICEF15投与前と投与後に、骨盤底電気刺激装置を使用し、1日2回(朝晩20分ずつ)計4週間電気刺激を実施し、aSMDCの生着を促します。