パイプライン
ICEF16
ターゲット疾患
ICEF16のターゲット疾患は漏出性便失禁です。
漏出性便失禁は、切迫した便意がなく患者さま自身も気づかないうちに便が漏れてしまう症状であり、内肛門括約筋の機能低下により生じることが知られています。専門学会誌に発表された論文(味村俊樹ほか「本邦における便失禁診療の実態調査報告―診断と治療の現状―」日本大腸肛門病会誌 65:101-108,2012)によると、便失禁患者のうち8割超(約84%)が、漏出性の症状を有しています。切迫性便失禁と同様に、既存の治療方法としては、食生活の改善指導や下痢止め剤などの薬物療法(初期保存的療法)や骨盤底筋訓練やバイオフィードバック療法など(専門的保存的療法)を行い、それら保存的療法の効果が不十分な場合には肛門括約筋形成術などの外科治療が適用されます。しかし、既存の外科治療は侵襲性が高く、また、効果が不十分な場合もあるため、保存的療法で充分な効果が得られない患者さまに対する低侵襲で高い効果の治療法が待ち望まれています。
ICEF16は現在前臨床の開発ステージです。ICEF16を用いた治療法は、ICEF15を用いた治療法と同様に、既存の外科治療よりも侵襲性が低いものです。本治療法では、患者さまご自身から採取して培養した骨格筋由来平滑筋細胞を患者さまご自身の内肛門括約筋に注入する計画です。これにより、損傷した内肛門括約筋の機能を回復し、根治を目指します。
開発中製品の特徴
作用機序
ICEF16は、日本では再生医療等製品に、欧州ではATMP(Advanced Therapy Medicinal Product)に、米国ではHCT/P (Human Cells, Tissues, and Cellular and Tissue-based Productに分類されます。
ICEF16で使用する細胞は、患者さまご自身から採取して製造した骨格筋由来平滑筋細胞(skeletal muscle derived smooth muscle cell: skSMC)です。内肛門括約筋は平滑筋であるため、衛星細胞(筋幹細胞)より分化・増殖させた細胞を更に平滑筋へと分化させます。 この骨格筋由来平滑筋細胞の投与により損傷した内肛門括約筋の再生が図られると考えています。調製した平滑筋細胞の特性は、in vitro(試験管内)及び in vivo(動物個体内)双方の試験で確認済みであり、この分化技術は現在特許出願中です。
投与方法
ICEF16については、内肛門括約筋へ注射によって注入します。また、ICEF15と同様に、投与前後に電気刺激装置による骨盤底筋電気刺激を実施し、投与した細胞の生着を促す計画です。